勝手
猫について書かれたブログを読んだり、Youtube動画を観たりしているとき、嫌悪するというほどではないが、少し気になる表現に出会うことがある。
たとえば、「いたずら」。
猫がなにかするとき、「本当はダメなんだけど、ちょっといたずらをしちゃおう」とか「飼い主を困らせてやろう」などとは思っていないはず。ただ、本能の赴くままに行動しているだけだ。猫からすれば、エサを食べることも、砂の敷かれたトイレにおしっこをすることも、じゃらしを追いかけることも、ティッシュをむしって箱から出してしまうことも、全部本能のなせるわざであろう。
猫にとってはどれも変わりなく、ただ本能にしたがっての行動なのに、人間に都合の悪いことだけが「いたずら」と表現されてしまう。勝手だよな、人間。
それから、「脱走」。
脱走とは、本来はそこにいなければならない人が逃げ出すこと。受刑者が刑務所を脱走する。そこから転じて、害をなすために閉じ込めておかれた動物が脱走する、という場合に使われるのも、違和感はない。いずれも、そこに閉じ込めておくことが当然であり、自由な外出は本来的に許されない場合である。
猫は、別に危害を加えるから家に閉じ込めておかれるわけではない。もちろん犯罪者でもない。家に閉じ込めておくのは、飼う人間がそうさせたいからそうしているだけだ。猫は、ただ出たいから外に出るだけ。それが悪いこととも、禁を犯すことだとも思っていない。それなのに、家から出たら「脱走」と、まるで犯罪者扱い。本当に勝手だよな、人間。
わたしも、猫がティッシュを全部かき出してしまったときは、ちょっとは「あちゃー」と思い、ふたのついた箱にしまう。室内飼いをしているから、外に出ていかないようにドアや窓には網をしつらえているし、ちょっと油断して猫がベランダに出てしまったときはすぐに連れ戻す。
でも、それを「いたずら」とは言いたくないし、「脱走」とも呼びたくない。
(本能のまま自由に行動したいだろうに、じゃましてすまんな)と思うだけだ。



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